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Fig.3

Time series records of δ18○ PDB of foraminifra(a). linear sedimentation rate(LSR)(b), qaurtz content (c), flux of quartz(d), median diameter of quartz(e), flux of eolina quartz(f), median diameter of eolian quartz(g)in core NGC59. Shadow periods indicate glacial age.
Weber et al.(1996)(12)は、北西太平洋表層の非生物起源堆積物には、大陸起源の風送度と島弧の火山活動による噴出物が混在していることを示し、海洋堆積物を用いた風送塵の定量に注意を促した。このことから海洋底コアから抽出した石英についても同様のことが予想され、過去の風送活動を復元するためには、まず火山噴出起源を除いた大陸起源の風速塵の石英の定量が必要となる。我々は、まず海洋底コアから抽出された石英の起源について考察し、その結果に基づき大陸起源の風送塵のみの石英を見積もり、過去の気候変動との関連を議論する。
5.1 海洋底コア中の石英の起源
我々は、海洋底コア中の石英の起源を考察するにあたり、粒度分布に注目して風送塵の起源の風下で堆積した中国のレス堆積物中の石英との比較を行った。まず太平洋深海底コアの石英の粒度分布は、表層試料で代表される中央粒径値が8.5φ,標準偏差が1.9φの突な対数正規分布(Fig.2a)から、粗粒粒子が多くなることにより標準偏差が2.5φとなだらかな対数正規分布(Fig.2b)まで変化した。全体的にはFig.2aタイプが優勢であった。次に風送塵の起源の風下で堆積した中国のレス堆積物中の石英は、中央粒径値が約4.6φ、標準偏差が約18φの対数正規分布(Fig.2c)を示した。これら分布と先に示したコア表層試料の石英の分布と比較した場合、深海底堆積物の方で非常に小さくなるが、粒度分布の型を決める標準偏差についてはほぼ同じ値であった。これは、大陸乾燥帯を起源とする風送塵石英の中央粒径値が輸送される距離により減少するが、しかしその一方、標準偏差は輸送される距離には関係がなく保存されることを示すものと推測される。つまり、海洋底堆積物中の標準偏差が約1.9φの対数正規分布を示す石英は、大陸を起源とする風送塵石英であり、標準偏差が1.9φより大きい分布を示す試料については、大陸起源の石英に粗粒な火山噴出物起源の石英が混入したことにより標準偏差が大きくなったと考えられる。このことは、電子顕微鏡による石英の形状観察のからも支持される。現在の日本の九州地方上空で捕獲される黄砂粒子の形状について、下原(1986)(13)は4μm程度の米粒状の粒子で特徴づけられる事を報告しているが、形状による分類から正確に風送塵起源の石英を見積もるのは非常に難しい。しかしながら、粒度分布の標準偏差が最も大きい試料については、明らかに粗粒粒子で鋭利な形状を示す石英が多く含まれていた。また同試料の生物起源をのぞいた陸源堆積物のスミアスライドの観察では、多くの火山ガラスが確認され、火山噴出物起源の影響を受けていたことが明らかであった。
5.2 海洋底コア中の石英のポピュレーション分離
海洋底コア中の石英には、大陸を起源とする風送塵とわずかながらではあるが火山噴出物起源が混在することが明らかなので、次に海洋底コア中の全石英の粒度分布から大陸を起源とする風送塵石英の粒度分布の分離(ポピュレーション分離)を行った。まず上記の考察から、風送塵起源の石英の粒度分布は、標準偏差1.9φ前後の対数正規分布を示すと仮定した。なお今回、標準偏差の値には、海洋底コアの表層試料の石英の1.9φを用いた。次に電子顕微鏡下での石英の形状からは、大陸起源石英と考えにくい鋭利な石英が粗粒粒子に多く確認されたので、約2μm以下の石英粒子はそのほとんどが風送塵起源であると仮定した。ポピュレーション分離は、この2点の仮定に基づいてを行った。つまり大陸起源石英の粒度分布は、粒度分布測定値の約2μm以下の値を対数正規分布関数で回帰させて復元している。回帰後の各係数からは、大陸起源石英の中央粒径値、及び全石英に対する含有率が求められ、さらに沈積流量を計算を行った。

 

 

 

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